「写楽」

(写真は創刊号表紙、森下愛子:篠山紀信撮影)

 浮世絵の謎の巨匠は「しゃらく」だが、ここで取り上げるのは「しゃがく」。80年5月に創刊(6月号)、5年半あまりに通巻69号が刊行された。当時、写真雑誌の中では最も売れた雑誌だったらしい。篠山紀信をメインに創刊されたようで、「激写」という言葉も生まれた。創刊号からしばらくは390円だった。ジョンレノン&オノヨーコからおニャン子クラブ、国会議事堂の内部やソ連権力内部抗争と、幅広く硬軟取り混ぜた紙面がたくさんの写真画像で取り上げられていた。

 神田神保町の古本屋街を歩いた際に、自分が持っていた雑誌類が結構な値段で売られているを見た。写楽は1,500円。何とか安いものを探し出してようやく500円。2冊買って帰る。それから何度かそんなことを繰り返した。それが今ではネットオークションで安く買えるようになった。こうして私の写楽のコレクションは60冊を超えた。

 この雑誌の面白いところは写真そのものもそうだが、紙面が世相を意識した構成であった点も良かった。そしてまた広告も今となっては非常に面白い。車やオーディオ機器の広告が多い。時代を感じる。オーディオ機器がシステムで30万円とはちょっと今では考えられない。CDプレーヤーもそれだけで今ではコンポが買えるほどの金額ときている。やはりカメラの広告も多い、宮崎美子の「いまの君は、ピカピカに光って~」の広告もある。

 改めて収集してみると、後半はほとんど買っていなかったことに気が付く。この雑誌の最終号も後から入手した。世にあまたあるように休刊という名の廃刊であった。最終ページの編集長の挨拶でこの写楽というネーミングが『音を楽しむように写真を楽しむ』という意味であることを知った。確かにこのあたりになると創刊当初の面白さというかパワーが減衰してしまっている。

 後発の「写真時代」の影響で、部数が減っての廃刊との情報もあるようだが、真偽の程は不明。ただ、この頃を境に「アクションカメラ」など、写真雑誌市場でのエロの度合いが加速していき、90年代の「ヘアヌード」へと時代は進んでいった。

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