波の数だけ抱きしめて

 80年代の終わりに始まったホイチョイ・プロダクションズの3番目の映画作品である、この「波の数だけ抱きしめて」。そっくり80年代のエッセンスが入っている。しかも、80年代の湘南。

 この映画の公開は1991年で、映画の冒頭も同年であるが、話の舞台はそこから9年遡って82年となる。茅ヶ崎のミニFM局が舞台になっているが、確かにこの時期にミニFM局が流行りだした頃だった。

 ストーリーは大学生4人で運営しているミニFM局が放送電波を中継しながら、その受信エリアを合法的に拡大していこうと実験を開始していた。そこにたまたま彼らの放送を耳にした広告代理店の営業マンが、彼らの計画を後押ししながら、自らの仕事とのタイアップを計画していく。そしてそこにメンバーの中での恋愛が絡んでくる。それにしても、中山美穂と松下由樹の日焼け具合、今では考えられないほど焼けている。特に、中山美穂は焼けているどころではなく、焦げている。それもリアル(?!)。

 茅ヶ崎の一部でしか聞かれなかったミニFM局が、中継器100台を数珠繋ぎにして、国道沿いに湘南エリアをカバーするFM局へ。そこからは私もリアルタイムで聞いた、80年代の曲が次々と流れてくる。そしてヤマ場のシーンでは御馴染みユーミンの曲が流れてくる。

 かなり計算尽くされていて、ある種の黄金律を忠実になぞったような雰囲気の作品だ。単なる恋愛映画でないところも良い。80年代の湘南。江ノ島が見えただけでも私の琴線は大きく震わされる。そして何よりもこのタイトルが見事、秀逸!。

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