「一番好きな(音楽)アルバムは何ですか?」と聞かれると、私は大滝詠一の「A LONG VACATION」と答える。「A LONG VACATION」は1981年3月21日にリリースされ、その年の夏には、さんざんラジオでオンエアーされていた。この当時、私は田舎に住む中学生で、まさにモノクロームのような少年だったが、パッと色が点いたような気がした。
オープニングを飾る「君は天然色」の音作りには新しい時代の到来を感じたものだった。曲の始まる前のチューニングの音も曲のイントロとして使ってしまうところにも驚かされた。ジャケットのデザインといい、全てが完成されたパッケージになっていた。
「雨のウェンズデイ」について
私が生まれたのは水曜日で、それを知ってから、週の真ん中であろうと、何となく水曜日が好きだ。けど、感覚的なものでしかないのだが、水曜日に雨となることが結構多いような気がしている。
高校のときの英語の授業中にマドンナの肩越しに、雨に濡れる中庭の芝というのが印象的に記憶に残っている。そのとき、頭の中では、この曲が流れていた。(あいにくそれが水曜日だったかどうかは覚えていない)
僕らが小学生の頃、ワーゲン占いというのが流行った。
ビートルのワーゲンを何台見ると良いことがある、という他愛もないものだった。
みんな、ワーゲン、ワーゲンと呼んでいた。
しかし、この曲の歌詞では「ワゲン」と言っている。
単に譜割りの問題だけかもしれないが、この音の響きはセンセーショナルで、とても新鮮だった。
「壊れかけたワゲン」だよ。
「ボンネットに腰掛けて」、雨の中、ケツが濡れようと、「海が見たい」って言い出したんならしょうがないね。
2コーラス目から3コーラス目の間奏で聞こえてくる、ギターソロは何度聴いても心が震える。鈴木茂だったようで。
今聴いても、各曲、背筋がゾクゾクっとする。
まさに80年代を代表するアルバムは、81年春に登場していた。
以下は、「我が心の大滝詠一」というNHK BSで放送された番組の1シーン。
「君は天然色」のレコーディング現場を彷彿させるような、圧巻のプレーヤー陣。